キヤノン株式会社

対談「産官と学」2013年10月 キヤノン株式会社本社

会社に入るとバックグラウンドが違う人たちに説明をしなくてはいけない(塩崎)
共通の話題が仕事以外にあると,仕事でも次のステップに行きやすいです.(菅)

プレゼン技術は上手.そこから一歩踏み込んでグローバルな友達を作ろう!

野田 : あとは,プレゼンテーション技術などはどうですか.もし,学生さんに対して,こういうことを大学でしておいて欲しいという要望があれば,おっしゃって頂けますか.

菅 : プレゼンテーション能力に関しては,最近の学生さんは長けています.我々も,最初の年に,一つのテーマに取り組んでもらい最後に報告するレポートレクチャーと言われるものを行っているのですが,皆さん素晴らしいです.もちろん,先輩の指導はあると思うのですが,皆さんスライドを作る能力も長けていて話も結構上手ですよ.

塩崎 : そうですね.学会で発表してきているのだろうな,という印象を受けます.

野田 : では,コミュニケーション能力の養成に関しては今まで通りでいいのでしょうか.

塩崎 : 一つあるとしたら,学会は共通知識がある人たちの中で発表であって,会社に入るとバックグラウンドが違う人たちに説明をしなくてはいけないので,よりわかり易い表現での説明が重要になってきます.そういうのを大学時代にも少し意識してもらうと良いと思います.

(司会)確かに,最近の学生は1対多のプレゼンはうまくなりました.ただ,1対1では必ずしもそうではありません.例えば,学会に行って海外の友達を作ってネットワークを広げる等,そういうところは,まだ改善の余地があると思っています.まあ授業とは少し違うのですが...

菅 : 海外に行って,もう一歩踏み込んで友達になるには,この人は野球が好き,この人はホッケーが好き等と,そういうところを,しっかりとキャッチして話す必要がありますよね.

(司会)実は海外で友人を作るというのが,仕事においても一番大事なんじゃないかと思っています.ですので,私は学生には学会に行ったら「友達を作りなさい」と言っています.

菅 : 共通の話題が仕事以外にあると,仕事でも次のステップに行きやすいですしね.あと日本の文化に興味を持っていることが大事です.海外の方でも,日本の文化に興味をもっている方がたくさんいらっしゃるので.

野田 : 日本のことも説明できないといけませんね.そういう意味で,学生さんには,もっと自分の国のことをしっかり学んでくださいというのも,いいメッセージですね.

社会人としての働き方-こだわりを持って追求する精神-

野田 : それでは次の質問ですが,社会人の働き方についてお聞きして良いですか.自分の両親からいろいろ話を聞くこともあると思うのですが,大学生ですと,社会人の業務をイメージするのは難しいと思います.例えば,日常業務と呼ばれるものには,どのようなものがあって,どのような働き方をされているのか簡単にご紹介頂けますか.

塩崎 : 製品開発なので,時期によって仕事内容はかなり違います.大学生の時は回路設計と聞くと,年中ずっと図面ばかり書いているイメージがありましたが,実際に回路図を書いているのはそれほどありません.企画部で決まった企画に対して,その機能を実現させるにはどのようなシステムが必要か等,システム設計をしている時間が長いです.設計した内容の報告書を作成し,関連部門の人にプレゼンしたり,ネゴシエーションした後,回路設計業務に移ります.CADで回路を設計し,その図面でよいかというレヴューを報告したりします.そうですね,それもまたプレゼンします.後は,実際に回路を作製したら,設計通りの精度が出ているかの評価を自分で行います.その評価は,オシロスコープで波形を見て,ずっと実験しています.最終的には,波形を取って検討したら,報告書にまとめて上司に報告します.そのような流れで仕事をしています. それ以外には,新規技術は特許にします.特許を作成する時はずっと特許ばかりを書いています. ルーチンで「一日がこういう感じです」と決まっているというよりかは,時期によって異なる仕事をまとめて行っています.

(司会)最初の企画を決めるプロセスはどのようになっているのですか.

塩崎 : 基本的なアウトラインは,商品企画部にて「こういう層をターゲットとしたカメラで」のように,コンセプトが決まります.それに対して開発部は,その機能は,今の技術で実現できるのかどうか,といった内容を回答して企画部とすり合せをしながら出来上がっていきます. 新人の方ですと,あるブロックのこういう機能を実現する,モジュールを設計するというところから始まります. その中でどういう工夫をするかというのは,その人次第なので,一年目でも創意工夫の余地はあります.特に,先ほど話に出たレポートレクチャーでは新技術を取り上げることも多く,その技術がのまま製品に搭載されたりすることも結構あります. ですから,1年目,2年目の人が,カメラのコアとなる新技術を担当して設計していることもよくあります.そういう意味でやりがいがあります.

野田 : やはり,主力商品がカメラやプリンタですから,かなり緻密な作業が要求されると思うのですが,そういう意味では,こだわりを持った方が結構いらっしゃるのではないですか?

塩崎 : それは多いと思います.皆さんも主力製品を担当しているという自負もありますので.特にカメラに関してはトップ企業として,他社には負けないというプライドがあります.

野田 : そういう気持ちと,細かいところまで追求する精神が,いいものを生み出すということですね.これも学生への貴重なメッセージですね.  本日は,お忙しい中,貴重なお時間を頂きありがとうございました.電子系学科を志望する学生に対してもとても有用なメッセージを沢山頂けたと思います.ありがとうございます.

対談 産官と学 キヤノン株式会社

編集後記
今回は電子工学科を卒業する学生が就職先として選択することも多いキヤノン株式会社に訪問しました.実際に製品を開発されている若手社員の方が,活き活きとご活躍されている姿を知ることができました.学生にとっては,大学を卒業し,会社に入社した後の自分の将来の姿と重ね合わせることもできるのではないでしょうか.(田邉孝純)

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