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Informatics

情報科学の教員

Informatics

湯川 正裕

湯川 正裕 准教授

Masahiro YUKAWA | ゆかわ まさひろ

研究キーワード:

信号処理工学 / 適応学習 / 情報通信工学

  • 教員プロフィール
  • 役職 : 教授
  • 居室 : 25-410
  • 電話 : 045-566-1521 ( 内線 47293 )
  • email :
  • 研究室 URL : http://www.kbl.elec.keio.ac.jp/

[ 担当講義課目 ]
複素解析(2年) / 電気電子工学実験(3年)

[ 研究の概要 ]

数理的基盤に立脚した新しい信号処理パラダイムの構築を目指しています. 数理科学で蓄積された知見を活用することで,信号処理の諸問題を見通し良く解決することが目的です. 主に,不動点近似・凸解析を利用した適応信号処理アルゴリズムの研究を行なってきました. 新しい時代を切り拓く信号処理技術に繋げたいと考えます.

最近の研究の紹介

「数理モデル選択」と「適応学習」の一体化
数理モデルの選択は非常に難しく,科学技術の中核に横たわる課題です.非線形システムの数理モデルとして,Volterra 級数展開に基づくものからニューラルネットワークまで,様々な数理モデルが研究されてきました.近年,再生核の理論に基づく非線形モデルが広く注目されていますが,それでも「再生核をどうやって選んだら良いか」という課題が残ります.

2001〜2009年までは(線形モデルに基づく)適応フィルタの研究を中心に行ない,2010年から「非線形システムの適応推定」に研究の中心をシフトしました.昨年9月に「多カーネル適応フィルタ」の論文 [1],この9月には,「数理モデル選択と適応学習を同時に行なう適応アルゴリズム」の論文 [2] をいずれも世界に先駆けて発表しました.この新手法では,複数の再生核ヒルベルト空間の和空間(複数の数理モデルを合成したハイパーモデルのようなもの)の中で学習します.このときに,「巧い数理モデルの選択」を「係数行列のスパース化」と考えることで,モデル選択問題をスパース最適化問題として定式化できることに気がつきました.最後に凸解析が重要な役割を担います.凸解析の最新の知見を駆使することで,この最適化問題の解を適応的に求めていく適応アルゴリズムの構築に成功しました.「数理モデル選択」と「適応学習」を一体化した新アプローチの誕生です.今後は,このアプローチの新展開を創造していくとともに,気象学・金融工学・光通信工学・脳科学・スマートグリッドなど様々な分野へ応用していきたいと考えています.

1. M. Yukawa, “Multikernel adaptive filtering”, IEEE Trans. Signal Processing, vol. 60, no. 9, pp.4672–4682, September 2012.
2. >M. Yukawa and R. Ishii, “Online model selection and learning by multikernel adaptive filtering,” in Proceedings of 21st European Signal Processing Conference, pp.1–5, 2013.

研究の特徴

「非拡大写像の不動点近似」を軸にして
「非拡大写像の不動点近似」を軸にして十数年,研究してきました.その一例を上で述べました.信号処理や機械学習の最新の動向を知るために論文を広げると,近接写像(proximal mapping)なる言葉が現れ,これが分からないと先に進めなくなることが多くあります.これ自身,凸解析で重要な劣勾配と深い関係にあって興味深いのですが,近接写像だけを凝視していてもその本質をつかめません.そんなとき役立つのが抽象化です.

非拡大写像は近接写像を抽象化したもの(一般化)です.非拡大写像の性質をきちんと理解することで,本質をすっきりと理解することができます.射影は近接写像の一例で,射影が信号処理に役立つことは少し勉強すればすぐに分かります.このように「近接写像」というものをズームアウトした立場(非拡大写像)から概観する,あるいは逆にズームインしてみる(射影)ことで「分かった」となります.スポーツにおいても,どのような戦略で試合を進めていくか大まかな流れを把握した後,個々のプレーの詳細を学んでいくことは有効であるに違いありません.

非拡大写像の不動点近似は,もはや数理的興味の対象であるだけでなく,情報通信工学・音響工学・脳科学・宇宙工学など,広く役立つツールです.しかし残念ながら,これを体系的に勉強できるテキストは,今のところ,数学書しかありません.比較的に敷居の低い入門書のつもりで2010年に講義ノートを作成しました.講義ノート(英語)はホームページで公開しています.

研究テーマ

  • 再生核理論に基づく非線形関数適応推定アルゴリズムとその応用に関する研究
  • Lp正則化(0<p<1) に基づくスパース最適化問題の解軌道の研究
  • 教師付きNMF(Nonnegative Matrix Factorization)と自動採譜への応用