川崎市役所

対談「産官と学」   2013年10月 川崎市役所

イノベーションを繰り返していかないと,何か一つに頼ってピークを越したときのダメージは計り知れません.

壁を越えて、皆が共存共栄できる空間 -川崎ならではのスマートシティを目指す!-

久保 :水素エネルギーという話が出ましたが,関連してスマートコミニティや,スマートシティ戦略について少しお話をお聞かせください.

鈴木 : スマートシティやスマートコミニティの取り組みは全国各地で行われていますが,目覚ましい取り組みを行っているところは,1社またはスマートシティづくりをしようとする主体が所有する,工場の跡地等の広大な敷地を使って,かなりコントロールができるようなところでです.その一方で,川崎は既成の市街地ができています.既に非常に便利な街になっていますが,そういう中にスマートコミニティとかスマートシティの機能をどうやって入れてくのかというのは,やはりコストもかかり,利害関係者も盛り込みながら進める必要があるので,すごく難しいです.

久保 : そうですね.既にできているインフラを使うとコストが安そうに思いますが,それをお互いに協調して動かしていくというのは難しいですよね.

鈴木 : ただそれを乗り越えていかないと,日本のスマートシティ作りはうまくいかないと思います.それで,川崎ならではの特徴を出すために色々と手がけようとしています.川崎の特徴としての臨海部の物作りと研究開発が融合した地域,既存の密に出来上がった大都市拠点の川崎駅周辺,既存の住宅と新しい高層マンションとが混在した武蔵小杉,これらの3つが代表的な事例です.頑張ってスマート化を地域の人たちと一緒に進めていこうとしています.

久保 : 特徴が拠点によって色々と違うのですね.

鈴木 : そうですね.例えば,臨海部はおそらく日本で最大の石油コンビナートがまだ現に活動している町です.この地域には,資本の系列等が異なる数多くの石油化学の企業群の工場があり,お互いに材料や資産を融通し合っています。ある工場で廃出・副生されて,別の工場では実は有用な原材料になるというものを,お互い配管を使ってやり取りしたりしています.ある意味では壁を越えて地域の住民ということで,企業コミュニティを作ってやり取りしています.さらにそこに,エネルギーや鉄鋼の企業等も入って皆が共存共栄をする空間ができています.そういう文化があるので,ここで何かができるだろうというのが今の発想です.

久保 : 企業さんは積極的に参加していただけるのですか?

鈴木 : 川崎のこの地区はとても積極的です.やはりそういうことをしていかないと,国際的な競争に勝てないという危機感をもっている裏返しだと思います.イノベーションを繰り返していかないと,何か一つに頼っていてピークを越した時のダメージは計り知れません.ですので,新しいもの考えましょうというきっかけ作りを我々からも誘導して,企業もそのマインドをずっと持ち続けることができています.
例えば石油の精製や製鉄では,実は水素が沢山使われているので,この水素を炭素社会に対応した基幹的エネルギーとして皆さんで共同利用して,純粋に使っていきませんか,という働きかけをしています.それが一社だけ特化して進めていると,なかなかものにならないですが,行政のニュートラルな立場であれば進めることができると思っています.

久保 : 最近は一つの技術だけでイノベーションを生むのは,かなり難しく,色々な物が組み合わさらないといけません.そういう意味で,行政にコーディネートして頂けるというのはイノベーションを目指すという意味では非常に重要な取り組みだと思います.

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