キヤノン株式会社

対談「産官と学」2013年10月 キヤノン株式会社本社

どういった学生に入社して欲しいと思っていますか?
一つは自分で考えて動かしていける人です.もう一つは,人間力豊かな人です.

プレッシャーに耐える力は大学時代の経験が生きる

野田 : ところで,今までいろんな製品を作られたと思うのですが,一番苦労されたものはどれですか?

塩崎 : 敢えて挙げれば,設計段階よりも,量産段階に入って,立ち上げ時に問題が出た時です.そういう時は一刻を争うので,時間との勝負です.もう発売日が決まっているので,プレッシャーもありますし,素早くその問題解決までに導く必要があります.設計時なら,グループにちょっと迷惑をかけるだけですが,発売直前になると,工場も販売も全部かかわってきますから…

野田 : それはもうプレッシャーでしょうね.そういう時に,どのようにして耐えられるのですか.

塩崎 : どのように解決しているかは,いつも思い出せませんが(笑),皆さん協力してくれるのでなんとか解決できています.解決して,発売できたらその分喜びも増しますし,そこがやりがいです.

野田 : そういう場面は,学生の時ではなかなか味わえないですからね.

対談 産官と学 キヤノン株式会社
菅: でも学生も修士論文発表の直前はそういった経験をしているのではないですか?チームではないのかもしれないですけれども,必死になってやりますから(笑).

塩崎 : 締め切りの前日深夜ずっと実験をしていた覚えがあります.もちろん追い込まれないことが一番ですが,結果的に修士論文の研究で追い込まれてしまったという経験は力になっていると思います.

野田 : ある意味それが,準備段階なのですね.製品では,前日ではもう間に合わないでしょうけど.土壇場でも,慌てないで「なんとかなるさ」位の気持ちを持てるかどうかが重要ですよね.

自分で考えて,自分の立ち位置を理解し,自分でマネージメントする精神!

野田 : 少し質問を変えまして,御社の社風を一言でいうと,どういった言葉で表されますか.

塩崎 : 個人的には新進気鋭とか?三自の精神ですかね.

野田 : 三自の精神?

菅 : 「三自の精神」というのはキヤノンの行動指針です.
「自発・自治・自覚」の三自の精神は,「われわれだって高級カメラがつくれるはずだ」と大きな夢を持った若者が集まった創業時から,今日まで受け継がれ,私たちの最も重要な指針となっています.
企業理念は共生です.私たちは,共生の理念のもと,文化,習慣,言語,民族などの違いを問わず,すべての人類が末永く共に生き,共に働き,幸せに暮らしていける社会を目指しています.

塩崎 : 確かに,私も職場に居ても,良くも悪くも自分でやるというのが社風だと感じます.

野田 : 大学の研究室と似ていますね.そのような職場の雰囲気が,商品開発等の新しい技術開発に向いているということなのですかね.

塩崎 : そう思います.新しいものを作っていこうというパワーを,一人一人の社員が持っているということが,会社を動かしていくうえで重要だと思います.

野田 : そういう雰囲気を維持するのは大変だと思いますが,素晴らしいと思います.そういった社風を踏まえて,どういった学生に入社して欲しいと思っていますか.

塩崎 : 一つは自分で考えて何でも動かしていける人です.もう一つは,曖昧な言い方になってしまいますけれども人間力豊かな人です.会社は組織ですのでチームで進めていく仕事が基本になりますので,リーダーシップも必要ですし,周囲の人への気配りも必要です.

野田 : 皆さんの個性を見抜く力も必要でしょうか.

塩崎 : そうですね.なにより一人ひとりが,メンバーから認められていて尊敬されていないと,仕事も進んでいきません.特にマネージメントする立場になってくると,チームのメンバーで,一人一人がどういう長所があるのかを見て,仕事を進めていくのが大事になってくると思います.