日産自動車株式会社

2013年10月 日産自動車座間事業所

違う分野の人とのコラボレーションの上でシステムが成り立っているので,
相手の言葉を正しく理解できると,すごく仕事が進みます.

様々な分野がある電気電子,自分の強みを持った上で幅広い興味を持つこと.

佐藤 : インバータや,モータを開発している部署にいます.具体的にいうと,リーフやフーガ・ハイブリッドに搭載されているインバータやモータの開発は,ここで行ったものです.
最近では,作業そのものは減ってきていて,マネージメントの立場から仕事を進めるようになっています.部下の相談に乗ることが一日の半分の日もありますし,将来を見据えた仕事や他の部署との調整をしながら,我々の部署として具体的な方針を策定することを考えたりします.部下がしている仕事のさらに先の仕事を用意しておくようなイメージでしょうか.毎週の定例の会議や,技術論議する場もありますが,決まった過ごし方はあまりありません.

寺川 : 一部から次第に全体を見渡されるようになられたということですね.
それに伴って,日常的な仕事はどのように変化していきましたか?

佐藤 : 入社した直後は,作業の日々でした.先輩から手書きでもらった回路図を書き起こして,はんだ付けして,実際に基板を組むような仕事が多かったです.今,改めて当時書いたものを見ると,恥ずかしいですね.それにはんだ付け一つとっても,やっぱり下手ですよね.しかし,そのようなことを行っていく中で,回路図はどう書けば読みやすいか,上手くはんだ付けをするにはどうすればいいか,ということが身に付きます.
後々,問題が起きた際に,その原因を考えるときに回路がどのような構成で成り立っているかを知っていると,品質にとって何が,大事かがわかります.単純作業の中でも,興味を持って取り組むうちに作業一つ一つが無駄ではなかったと思うことが良くあります.
最初のうちはそのように,先輩からの指示通りの作業をすることがメインで,少しずつ仕事を任されるようになり,そのうちにある程度の塊で仕事を渡されるようになります.自分で解決できるところは自分で解決して,または先輩に相談しながら取り組むうちに,様々な能力が身についてきたという印象を持っています.もちろん教科書のような書籍を使って勉強する機会もありますが,実際に物を作って初めて経験することから学ぶ場面が結構ありました.

寺川 : ご自身で時間の使い方を考えたり,アウトプットまでの道筋を考えたりする機会も増えてきたのですね.

佐藤 : はい,増えます.最初は,仕事が一本あって,このようにやりなさいと言われます.指示通り行えば進む,というケースです.しかし,それは仕事を始めて1年位のもので,2年目3年目になってくると,複数の仕事をこなして,期待されたアウトプットを出さなくてはならなくなります.何を先に行うべきかや,計画通りに進まない時の対応など,周囲とも相談しながら進めていきます.

寺川 : 新しい企画が立ち上がってくるときは,どのような様子でしょうか.

佐藤 : 我々は日ごろから良い技術を蓄積していって,どこかのタイミングで「こういう事が必要だ」,「こんなことができますよ」というのを,周囲にアピールしていきます.商品を扱っている側では,「こんな車が欲しい」と思っていたりします.さらに会社の方針としての進みたい方向もあります.それらが結びついたときに,「こういう車を作ろう」となります.一方向というのはあまりなく,商品として欲しいもの,会社として行いたいことと,技術の良いもの,それぞれあり,それらがどこかで「バーン」と会うのですよね.
電気電子は様々な分野があるので,例えば「僕はデジタル回路しか知りません」というように,その中の一つの分野だけしか知らないという状況には,ならないようにしておく必要があると思います.自分の強みを持ったうえで,幅広く興味を持つことは必要だと思います.デジタル回路だけではなくて,アナログ回路もそうですし,パワーエレクトロニクスを扱えば熱の問題も出てきます.特に自動車では,電子技術の比率が高くなってきてはいますが,電子だけで駆動するシステムではありません.違う分野の人とのコラボレーションの上でシステムが成り立っているので,相手の言葉を正しく理解できると,すごく仕事が進みます.

対談 産官と学 日産自動車株式会社