日産自動車株式会社

対談「産官と学」2013年10月 日産自動車座間事業所

何をやっても先が見えないという事も繰り返す
その分,成果が出た時の達成感は大きいです.

自分の仕事が評価される楽しみ.日々のプレッシャーは「何とかなる」という精神で乗り越える

寺川 : 学会発表のような機会はありますか?

佐藤 : はい,あります.研究所に所属しているような人は日常的にあるでしょうし,我々の開発部門においても,節目では製品と技術について対外発表しています.例えば自動車技術会や,アメリカの自動車関連の学会等です.また,研究発表とは少し違っても,技術をアピールする機会は多いです.

寺川 : 佐藤さんが開発されたものが,実際の車に採用されて,嬉しかったというような話はありますか.

佐藤 : はい,仕事にはそういう楽しみがあります.
私が入社して5,6年経った頃に私が関わった開発品が,車に搭載されたときの話です.エアコンのシステムに使われる通信用のICです.お客様の目に直接触れるものではないのですが,現在でも使われていて,自分の中で一番印象に残っています.特許も出していて,特許が採用されていると,他社がどれだけ気にしているのかも見えてきます.誰かが調べた痕跡が出てくると,「ああチェックされているな~」と,自分の成果が,あるレベルに達したというのが実感としてすごく持てます.自分の仕事が採用されている車が,世の中を走っているというのは,すごく誇らしく思うことも多いです.
リーフのインバータやモータに関しては,自動車技術会から技術開発賞を頂きましたし,アメリカではテン・ベスト・エンジン(Ward’s 10 Best Engines)という,その年で最も優秀で魅力的なエンジンを選ぶ賞があり,電気自動車として初めて受賞しました.全部ではなくとも,自分たちが関わったものが,お客様に使われて,しかも評価が高いということになれば,やりがいにつながります.もちろん,そこに至るまでには,何をやっても先が見えないという事も繰り返す,フラストレーションがたまる時期もあります.その分,成果が出た時の達成感は大きいです.直接お客様が触れることになる商品に,関わることができるというのは,すごく良かったなと思います.

寺川 : ご家族にも,話されますか?

佐藤 : そうそうそう(笑).今だと,電気自動車の仕事をしていると言えますし,子供が作文書くときもちょっと電気自動車の内容を入れさせたりとかですね(笑).

寺川 : お子さんにとっても誇らしいのではないですか?お父さんはこのようなものを作っているんだよと,伝わりやすいですよね.

佐藤 : そうですね.どこまで理解しているかは,わからないのですけれども(笑).

寺川 : 壁にぶつかったときは,何か対処法はありますか?

佐藤 : そうですね,「何とかなる」という精神で来たと思います.「さすがにこれは本当に不味いのではないか」,「このままだと開発が止まってしまうのではないか」というトラブルも起こることがあります.さらに,いつ解決するのか,出口が見えないようなこともあります.しかし,そのような時は,どこかで何とかなると考えて,皆の協力を仰ごうとしていました.「一人ではない」と考えて,プレッシャーを感じないようにすることがありました.
難しいのは,学生の時と違って,ビジネスなので,決められた時期までに,ある品質・あるコストを出せないといけません.どのような小さな部品一つとっても,一つしくじると会社にとっては,車が出せなくなります.ビジネスのプランが崩れるので,そのようにならないようにしないといけません.
時には,決められた時期までに,指定されたコストと品質を得るために,今までとは違う方法をとるしかないと切り替えることも必要です.判断の速さも求められます.そのようなプレッシャーを,「何とかなる」という精神で乗り越えてきました.後は,会社を一歩出たら仕事の事は一度忘れて,リフレッシュするようにしています.また明日考えようと思うようにしています.

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